今から
20年ほど前の話です。
当時、
私は江東区の下町に住んでいました。
そして近所のオデン屋の屋台によく通っていました。
決してそこのオデンが美味い訳じゃなかったのですが、その屋台に集まる人達が、実に味のある人達で、しかも阪神タイガースのファンばかりだったということもあり、よく通っていました。
そんな
お客さんの中でも、強烈な印象の方がいました。その方は、いつも典型的なテキ屋さん(ジャリンコチエのお父さん・テツ)と同じ格好なのです。
お仕事は、
まさしくテキ屋の元締めで、夜の繁華街でタコ焼きを焼く舎弟が4~5名いるようでした。
その大将は、
ほぼ毎日、その屋台に顔を出す馴染みさんのようで、結構、無理な注文もOKのようでした。
(コンビニで買ったカップラーメンを屋台に持ち込み、屋台のオヤジにお湯を要求していたのを見たことがあります)
そんなある日、
たまたま隣に座ったその大将から話しかけられました。
『兄ちゃん、最近よくみかけるなぁ。この近所に住んでるんか?なかなか飲みっぷりがエエなぁ』と、お近付きの乾杯を交わし、それからいろんな会話が始まりました。
私はテキ屋さんの
商売がどのように成り立っているのか興味があったので、あれやこれや質問してみました。
中でも強烈だったのが、タコ焼きのタコは築地から来てるが、タダ同然で手に入れているというコトでした。
詳しく聞くと、
タコ卸の店では、チョット傷んだり、傷物になり売れなくなったタコが、毎日出るそうです。
そういうタコは、廃棄処分を待って、店の横の通路上に無惨に捨てられているそうなんです。
それをタダ同然でもらって来て。。。
それを聞いて、チョット唖然としました。
確かに、
屋台が衛生的であるコトを求めるのは難しいでしょうが、まさかそんなモノを使っていいものか、ビックリでした。
大将に、
そんなモノ使って大丈夫なのか尋ねると、『大丈夫や~。きれいに水道で洗うし、火を入れるから殺菌されてるやろ。それにウチのタコ焼きはタコが入ってるのか入ってないんか分からんくらい小さいし、酔っ払いしか買わへんから、ウチのタコ焼き食うて腹痛くなったんかもわからんしなー』と自信満々です。
いやいや
そういう問題じゃないでしょう!とツッコミたくなりましたが、あまりにも得意気に喋っている大将を止めるコトが出来る人間は誰もいません。
『これからは
屋台のタコ焼きは食べるの止めよう』思っている所に、舎弟の一人が、今夜のアガリを持って来ました。『粉モンは儲かるで!オヤジもオデンなんか手間がかかる商売辞めてタコ焼き焼いたらエエのに』とうそぶいています。
しかし、
大将の横に腰を降ろした舎弟がコップにビールをつぎながらボソリと一言。『でも、大将は結構稼いでるのに、いっつも同じ格好ですよね。銀座もこの格好で歩くんで、一緒に歩くの恥ずかしいんですわ』と。
それを聞いた
大将は、『そんなコトを言ってるからいつまで経っても出世出来へんねん、お前は!考えてみ。自分家の裏庭を、ブランド物を着て歩くアホがどこにおんねん。銀座は、俺には裏庭と同じねんど。普段着で十分やろが。一張羅は結婚式と葬式に着るくらいでいいんや。見てみ、銀座をオシャレして歩いているヤツらは、みんなお登りさんやで』と。
ホンマかいな!
とここでもツッコミたくなりましたが、裏庭には確かに普段着だよな。
それに銀座を自分家の裏庭と言い切る大将の感覚には恐れ入りました。
自分の信念を
シッカリ持っているヒトの力強さと、物怖じしない自信は、ある意味勉強になりました。
東京を離れて
随分時間が経ちますが、大将は元気にしているのかな?
どなたか、テキ屋スタイルで銀座を颯爽と歩く大将をみた方は、教えて下さい。
また乾杯したいなぁー。